18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命以降、石炭や石油などの化石燃料が大量に消費されるようになり、大気中の二酸化炭素濃度は現在でも上昇を続けています。化石燃料には炭素が多く含まれており、これが燃焼することによって、炭素が酸素と結びついて二酸化炭素が放出されます。
一方で、炭素は多彩な形態をとることができ、地球上のあらゆるところに存在しています。例えば、動植物の生命を維持するために必要な糖やデンプン、タンパク質などの化合物は炭素からつくられています。このように炭素は形態を変えながら、地球の大気圏、生物圏、水圏、地圏を循環しています。これを炭素循環といい、大気中の二酸化炭素を出発点に考えます。ここでは、炭素循環について学んでいきましょう。
まず、大気中の二酸化炭素は植物に吸収され、光合成によってブドウ糖やデンプンなどの養分(単糖・多糖類)に変換されます。この過程で植物から酸素から吐き出され、動物がこの酸素を吸って呼吸し、再び二酸化炭素が大気中に放出されます。また、動物は植物を食べることによって、炭素からできた養分を取り込みます。そして動物も植物も命を終えると微生物によって分解され、二酸化炭素になって大気に戻ります。死骸由来の一部の炭素化合物は、地面や地中に長い間とどまります。
大気中の二酸化炭素は、「溶解ポンプ」と「生物ポンプ」の作用によって、海の中にも取り込まれます。「溶解ポンプ」は、大気中の二酸化炭素が物理的・化学的に海水に溶け込むことです。表層の海水に溶け込んだ二酸化炭素は、冷たい海水とともに深海に沈み、何千年もの間、海底に閉じ込められ、やがてゆっくりと海面から大気中へと戻っていきます。「生物ポンプ」では、最初に海洋表層にいる植物プランクトンが光合成により二酸化炭素を取り込み、有機物を作り出します。植物プランクトンの体内の有機物は、食物連鎖によって動物プランクトンや魚などに取り込まれます。プランクトンや魚などが命を終えると微生物によって分解され、二酸化炭素になって大気に戻ります。死骸由来の一部の炭素化合物は、海中へと深く沈み込みます。
このように、地球上で炭素が循環することによって、大気中から取り込まれる二酸化炭素と放出される二酸化炭素の量は、ほぼつり合っていました。ところが、人類が化石燃料を大量に消費するようになって以来、放出される二酸化炭素が急増し、現在ではバランスが崩れています。大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命前の278.3ppmに比べ、2021年には415.7ppmと1.5倍にまで増加しているのです。大気中の二酸化炭素濃度上昇による地球の温暖化については、以下のコラムで詳しく解説しています。
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文責:本郷 照久(教授) https://www.sit.ac.jp/laboguide/kougaku/seimeikankyou/#hongo