ソーラーパネル(太陽光発電) -再生可能エネルギー発電の主力-

🌎 再生可能エネルギーの代表格「ソーラーパネル(太陽電池)」

日本では以前からエネルギー源として、地球温暖化につながる石油や石炭など化石燃料の段階的削減に向け、再生可能エネルギーへの転換が求められてきました。1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)による京都議定書の発効以降、国際的な温室効果ガス削減の動きが実質的に始まりましたが、その後、紆余曲折を経てCOP21のパリ協定(2015年)まで進んだものの、現在もなお国際的な地球温暖化抑制のための本格的取り組みには程遠い状況と言わざるを得ません。日本でも、2011年3月の福島第一原子力発電所事故による電力供給事情の悪化などでCO2排出削減が事実上困難になるなど、化石燃料削減への道筋はまだこれからといった段階でしょう。とはいえ、その間も温暖化の進行は留まることなく、今後世界的な問題としてさらに深刻化することが危惧されます。

化石燃料削減のための最も現実的かつ有効なエネルギー転換は、やはり再生可能エネルギーの利用拡大でしょう。「再生可能エネルギー(再エネ)」は、別名「グリーンエネルギー」や「自然エネルギー」などと呼ばれることもありますが、例えば太陽光や太陽熱、風力、バイオマス、地熱、水力など、自然の力や再生可能な資源を利用するエネルギーの総称です。つまり、石炭や石油、天然ガスのような地下埋蔵資源を消費するのではなく、自然界に常に存在するエネルギーを有効利用するエネルギーのことを指します。

再生可能エネルギーには、風力・地熱・太陽光・太陽熱などなど、さまざまなエネルギー源があります。どれをとっても共通するのは、「身のまわりにある」「枯渇しない」「二酸化炭素を排出しない」ことです。現在、日本国内の発電(電源構成)における再生可能エネルギー(水力を含む)比率は22.7%(2022年度)1)ですが、昨今の原油価格高騰などの影響もありさらなる増加が期待されます。その中で、最も大きな発電割合を占めるのが太陽光(電源構成中の9.9%)で、次いで水力(7.1%)、バイオマス(4.8%)と続きます1) 。中でも太陽光発電は2020年以降年々増加しており、近未来の再生可能エネルギーを支える主力的存在といえましょう。
1)資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2023年度版」
URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/

🌎 「ソーラーパネル(太陽電池)」のしくみ

では、ソーラーパネルはどうやって太陽光を電気のエネルギーに変えるのでしょうか?その源は、「半導体」にあります。既に公開の、“LED(発光ダイオード)のコラム< https://dep.sit.ac.jp/lsgc/column17/> でも触れられていますが、ここでは簡単に説明しましょう。

半導体とは、電気を通さないもの(一般的なプラスチックやせとものなど)と、電気をよく通すもの(金属など)の中間にあたる物質で、シリコン(ケイ素)がその代表例です。その半導体には、n型とp型の2種類があり、n型は電子が豊富にたまった状態なのに対し、p型はその逆で電子が不足した状態になっています。このn型とp型の二つの半導体を接触させると、少しのエネルギーを与えただけでn型からp型に電流が流れる新しい性質(起電力)が生まれます。つまり、太陽光パネルはまさにその性質を使って、太陽からの光を受けて電子の流れ(n型からp型への電子の流れ)をつくり、直流の電流が生まれる(これを「光起電力」といいます)ことで電気エネルギーを得る仕組みなのです。

もう少し具体的に説明すると、ソーラーパネルは図のような仕組みになっています。太陽の光が当たる面をn型半導体の層、その下地となる基盤側にp型半導体の層でできた、いわゆる二層構造でできています。このようにn型とp型を接合させると、その境目に(空乏層といわれる)わずかな境界領域が形成され、電子の流れは起きません。これに太陽光が照射されると、その境目の空乏層を電子がp型→n型の方向へ通り抜け、n型には電子が集まった-(マイナス)極と、p型には正孔(電子の抜けた穴で、プラスに荷電)が集まった+(プラス)極が形成されます。これにより、n型とp型を回路で接続すると電子の流れができることになり、「光起電力」が発生することになります。このようにして、太陽の光を電気のエネルギーに変えているのです。

なお、太陽の光の明るさは一定ではありませんので、一般にソーラーパネルの回路には蓄電池を備え、光起電力で得た電気エネルギーを一旦貯蔵します。これを必要な電圧・電流に変えて供給することにより私たちの生活に使えるようになるのです。このシステムのことを一般に「パワーコンディショナー(パワコン)」といい、太陽光発電に欠かせない役割を果たしているのです。

🌎 「ソーラーパネル(太陽電池)」の課題

ソーラーパネルによる太陽光発電はたくさんの長所があり、例を挙げると、①自然エネルギーの有効利用、②既存の光熱費削減、③長寿命で保守管理が容易、④太陽光があたる場所であればどこでも設置可能、など多数あります。加えて、余った電力は電力会社に売却も可能なので、基本的には高出力を得た場合でも無駄になりません。とくに近年は、いわゆる空き地(遊休地)の有効利用策の一環として、ソーラーパネルの設置を進めるケースが増えているようです。

とはいえ、ソーラーパネルにもまだ課題があり、現在もその開発途上の真っ最中なのです。

その課題として、まず太陽光パネルの効率や耐久性が挙げられます。まだ太陽光で得たエネルギーからの電気エネルギーへの変換効率に課題があり、高出力を得るために必要な場合は相当のソーラーパネルの面積が必要という現状があります。現在もこの効率向上はソーラーパネル開発の大きな課題でもあります。加えて、システム全体としては経年劣化がどうしても避けられませんので、その克服も課題の一つです。このほかにも、設置コストの問題や、余剰電力の電力会社による買取価格が近年低下していることなども挙げられます。

もう一つ、あまり知られていないソーラーパネルの課題に、その重さがあります。ソーラーパネルの受光部である半導体自身にはそれほどの重量はないのですが、これが割れると使えなくなること、および風雨や汚れを防ぐために一般にはガラス基板で挟み込んで使われます。すると、パネル全体が重くなるため、設置には十分な荷重を支える構造が必要となります。家屋や建物の天井部への取り付けで問題となる点でもあります。

とはいえ、ソーラーパネルによる太陽光発電は年々進化を遂げており、近年の半導体不足の影響はありましたが価格も年々下がる傾向にあります。将来、再生可能エネルギーの主力かつ切り札として、日本の電力事情を大きく支える存在になることを期待したいものです。

🌎 埼玉工業大学「クリーンエネルギー技術開発センター」

埼玉工業大学では、2024年に「クリーンエネルギー技術開発センター」を開設、大学33号館を中心として様々な形での脱炭素社会のモデルを構築する研究開発を進めています。興味や関心がありましたら、ぜひこちらのサイトもご覧いただければと思います。
[本学にクリーンエネルギー技術開発センターを開設
<https://www.sit.ac.jp/news/240328_1/>

[地球環境問題の解決に挑む「クリーンエネルギー技術開発センター」が開設されました!] <https://dep.sit.ac.jp/lsgc/news/2024005a/>

文責:有谷 博文(教授) https://www.sit.ac.jp/laboguide/kougaku/seimeikankyou/#aritani

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