🌎 地球環境に優しい「クリーンエネルギー」の1つ:「生物発電」を紹介します。
「生物発電」は生物の生きる力を利用して発電する新しい発電技術で、身の周りの微小エネルギーから電気をつくる「エネルギーハーベスティング」の1つです。エコでクリーンな夢の発電システムと言えるでしょう。
※ エネルギーハーベスティング: 身の回りに様々な形態で存在する未利用のエネルギー(電磁波・室内光・振動・温度差・浸透圧・生体エネルギーなど)を「収穫:ハーベスト」して電気エネルギーに変換する技術で、環境発電と呼ばれることもあります。今回のコラムでは、この中から、生体エネルギーを利用する「生物発電」を紹介します。
🌎「生物発電」のいろいろ
A:バイオ燃料電池
自然界に存在する有機物(糖・有機酸など)を、(1) 微生物の代謝反応や、(2) 生物由来の酵素タンパク質の触媒反応によって効率的に分解し、電気エネルギーを得る発電法です。「微生物バイオ燃料電池」と「酵素型バイオ燃料電池」の2種があります。いずれも生物由来の化学反応を利用して発電します。発電量は決して大きくはありませんが、自然界の身近な成分が燃料となり、そこから取り出された電子は酸素に受け渡され、最終的には水ができます。とても安全でクリーンですね!
A-1:「微生物バイオ燃料電池」
「微生物バイオ燃料電池」は、微生物の代謝反応を利用します。汚水や汚泥に含まれる有機物を燃料とするタイプや、植物が光合成でつくった有機物を燃料とするタイプなど、さまざまな種類があります。植物の光合成と組み合わせた「田んぼ発電」や「植物発電」は、太陽光発電(ソーラーパネル)とは異なり、植物が元気に育つ環境さえあれば24時間 電力を得ることができます。発電によりつくられた水は植物が再吸収します。「エコ」ですね?。
● 田んぼ発電 → https://www.nippon.com/ja/views/b01503/
● 植物発電 → https://dime.jp/genre/1589589/
これらの電池は、「水田や植物の水分量測定センサー」・「イルミネーション」・「作物被害防止用機器」用の電源として、電力供給が困難な場所での利用が期待されています。
A-2:酵素型バイオ燃料電池
「酵素型バイオ燃料電池」は、生物由来の酵素タンパク質を電極に固定化し、その触媒反応を利用して発電します。「昆虫」や「ヒト」の体液で発電する酵素型バイオ燃料電池の研究が活発化しています。
1)昆虫の体液で発電する酵素型バイオ燃料電池
ゴキブリやカタツムリなどの昆虫の体液中の糖分を燃料として発電します。特にゴキブリは生命力が強いので、体液電池を電源とする微小カメラやセンサーを生きたゴキブリに搭載して遠隔操作し、災害時に瓦礫の下などを捜索させる「災害用昆虫ロボット」としての活用が期待されています。
● ゴキブリ発電 → https://emira-t.jp/special/4340/
● カタツムリ発電 → https://www.chem-station.com/blog/2012/04/post-377.html
2)ヒトの体液で発電する酵素型バイオ燃料電池
血液中の糖分や、汗の乳酸を燃料として発電します。「スマートウォッチ型ヘルスケアデバイス」や、人工心臓や人工すい臓などの「体内埋め込み機器用電源」として、これからの超高齢化社会・人生100年時代を支える「AI医療」や「デジタルヘルスア」の一翼を担うかもしれません。
→ 地元バイオマス資源を活用する人生100年時代のヘルスケアデバイス
B: 自然界の生物発電
「デンキウナギ」「デンキナマズ」「シビレエイ」などの電気魚は、筋肉の変形物として発達した発電器官(発電板細胞)をはたらかせ、神経や筋肉の活動に伴って電流を体外に放出します。これらの電気は自己防衛や環境探知(障害物や獲物を探す)あるいは仲間同士のコミュニケーションのために利用されます。「デンキウナギ」の場合には、直列に積み重なった数千個の発電板細胞をつかい、瞬時に800Vにも達する強力な電気エネルギーを発生させることもできます。
● シビレエイ発電機 → https://emira-t.jp/special/4114/
※ ヒトを含む多くの動物も、神経細胞の情報伝達や心臓の拍動に、活動電位(一過性の膜電位:数十mV)の変化を利用しています。
※「ホタル」「ホタルイカ」「オワンクラゲ」などの光は、これらの生物が作りだす酵素タンパク質の化学反応による「化学発光:ケミルミネッセンス」の1種「生物発光:バイオルミネッセンス」です。化学反応により生じたエネルギーが光として放出される現象で、電気をつくって発光しているわけではありません(笑)。
参考:EMIRA特集「生物エネルギーの進化」→ https://emira-t.jp/special/theme/3822/
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文責:長谷部 靖(教授) https://www.sit.ac.jp/laboguide/kougaku/seimeikankyou/#hasebe